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浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま コラム

浅草「鈴芳」の生ホッピーで心を満たした夜

やまま

やまま

浅草に引っ越したとFacebookに投稿したら、かつての職場の先輩2人が「浅草で飲もう」と連絡をくれた。

私がその会社を退職してから、4年以上の月日が経っている。それでもなお、気にかけて下さることがうれしかった。Facebook、捨てたもんじゃない。SNSは使いようだ。

早めの時間に待ち合わせ、浅草らしいところに行こう、と6区あたりを3人でウロウロ。たどり着いたのは「ホッピー通り」だ。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま

近づいてみると、学園祭会場に来たのかと思ってしまうほどの呼び込み合戦。うちは安いよ、すぐ入れるよ。四方八方から声がかかる中、呼び込みなしで佇む「鈴芳」の姿が目に留まった。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま 生ホッピー 外観

サーバーからホッピーを注ぐ「生ホッピー」が飲めるお店として、通りの中でも有名とのこと。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま 料理 生ホッピー

迷うことなく透明のビニールシートをぺらりと開け、目の前にあった、背もたれのないパイプ椅子の席に腰かけた。ひとまず、名物の生ホッピーだ。黒・白ともに550円。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま 生ホッピー

生ビールさながらのふわっとした泡、でもビールとはどこか違う、あっさりとした喉ごし。
焼酎の量はどのくらいなのだろう。おいしくて半分くらい一気に飲んだら、だいぶよい心地になった。

おつまみにお願いしたのが、これまた名物だという「韓国風牛すじ煮(650円)」。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 煮込み

赤い牛すじ煮なんて、はじめて。

メニュー表にはピリ辛、と書かれていたけれど、色ほどには辛味を感じない。コチュジャンが入っているのかな。おなじみの牛すじ煮に別方向からのコクが加わった感じだ。

具材はシンプルに、賽の目に切られたこんにゃくと牛すじ。上に乗せられたたっぷりのネギがうれしいな。ほかほかの白いご飯に乗せて丼料理にしたいくらいだ。

それから忘れちゃイカンのが、サラダ。これ、ジョシのたしなみ。豆腐サラダ(600円)をお願いすると、野菜と豆腐でてんこ盛りの皿が渡された。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 豆腐サラダ

カイワレ大根がふんだんに使われているのが特徴的だ。スペシャルなソースや具材で和えられたおしゃれなサラダもよいけれど、本当に欲しているのはこういう、野菜がドーンと盛られたシンプルなやつなんだ。理想的なサラダに、見た目だけで満足してしまう。

それからハチノスやら豚足やら串やら頼みつつ、生ホッピーをおかわりして、だらだらと喋った。

ちょっと仕事の話をし、かと思えば近所の町内会の話を聞き、私の引っ越しエピソードを披露した。4年ぶりに会えたというのに、実りある討論などなにもなかった。

透明なビニールシートに覆われた席に、幅の細い折り畳みテーブルと、パイプ椅子。座り心地のいい環境、とは言い難いこの席で延々盛り上がれるのは、心の距離が近くなっている証だろう。大衆居酒屋の人と人との距離の近さは、心を開くための装置なのかもしれない。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま 料理

このところ、会社での人間関係に悩まされていた。この日も逃げるようにデスクを飛び出してきていた。

会社って怖い。1日の大半を過ごすがゆえに、この世の全ては会社である気がしてしまう。そこで誰かに敵意を向けられると、私はこの世から必要とされていないような気がしてしまう。

そんなとき、Facebookで先輩たちが声をかけてくれたのだ。なんと表現したらよいかわからないので「先輩」と称しているが、実際のところはそう呼ぶことを躊躇するほどベテランの方々である。かといって「先生」でも「お父さん」でもなく……「近所のおじさん」?

当時は異なる部署に所属していたものの、部署横断プロジェクトのメンバーとして大変お世話になった。新卒ぺーぺーなのに、偉そうに企画書を披露する私を見守り、育ててくださった恩は忘れない。

そんな人たちが、いま、時間を作って浅草で酒を酌み交わしてくれている。人の縁というのは、なんとあたたかいのだろう。

生ホッピーで喉を鳴らしながら、行きどころのない無目的な会話を交わせる時間を幸せに思った。

会社で感じる孤独なんて、とあるビルの一角でもたらされる小さなこと。

会社は、私が知る世界の中のごく一部でしかないのだ。外の世界に繰り出せば、人が、酒が、空気が「ぜーんぜん、ひとりぼっちなんかじゃないよ」と教えてくれる。嫌で仕方なかった明日が、それほど怖くなくなっていた。私を受け入れてくれる場所は、たくさんあるのだもの。

悩めるワーカホリックな方々に告ぐ。仕事帰りのアフターファイブを楽しもう。会社という小さな世界ですり減らしてしまったエネルギーを補給しよう。会社の外には、今日もあったかい時間があふれている。

浅草 ホッピー通り 鈴芳 やまま 生ホッピー 外観

■鈴芳 (すずよし)
住所:東京都台東区浅草2-5-1

(文・やまま)

ライタープロフィール

85年生まれのアラサー銀座OL。独女です。人生の楽しみは食べること。”食べものエッセイスト”を自称し、ブログ「言いたいことやまやまです」にて200件以上の食べもの関連記事を公開中。好物はスーパーの総菜コーナーの白身魚フライと、料理の汁に浸した白米ORパン。お酒はハイボール&焼酎派です。