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冬 友達 俵万智

冬の醍醐味…喋る度に見える白い息|徒然花

駿河 慧

コラム・徒然花、今回のテーマは「白い息」です。友人との会話で見えた白い息。これが楽しさの度合いを測るものになるとは思いもしませんでした。

寒空の下で待ちぼうけ

冬 友達 俵万智
お正月、息が見えるほどの寒さを誇る日に、私は待ちぼうけをくらいました。

女友達のアイコとヒロコの3人で買い物に行く予定になっていましたが、アイコが寝坊で遅刻。
私とヒロコは寒空の下、駅前で手持無沙汰となりました。

最初はお互いスマホをいじるも、すぐに飽きてしまい、自然と始まるお喋り。

アイコとヒロコは学生時代からの友達で、どこへ行く時もいつも一緒の仲良し3人組だったので、ヒロコと2人っきりになるのは珍しいことでした。久しぶりの2人きりに、なんともいえない微妙な空気が流れます。

そんな空気を吹き飛ばしたくなった私は、空に向かって息を吐き出しました。
真っ白な煙となり、すぐさま消えていく私の息。

それを見たヒロコは、同じように白い息を吐き出しながら「寒いね」と呟きます。その言葉にふと私は何かを思い出しそうになります。

「……なんかそれ、聞いたことある」

私の記憶を刺激する「寒いね」というフレーズ。
それはヒロコも同じでした。

しばらく2人で頭を悩まします。
再び空に白い息を吐いた瞬間、私は思い出したのです。

「寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ!!」
「それだ!」

ヒロコの顔に笑顔が広がります。

この言葉は、歌人・俵万智さんの歌です。国語の教科書に載っていたこの歌を、私もヒロコも、テスト勉強のために一生懸命繰り返し覚え、そして時折口にしていたのです。最初の気まずさから一転、私たちは会話も弾み、体温も上がっていきました。

白い息が見える時

冬 友達 俵万智
最初、私たちの間にはまともな会話はありませんでした。けれども、覚えがあるけど思い出せないフレーズによって会話が生まれ、そして予想に反して盛り上がりを見せる結果となったのです。

会話が増えるほど、2人の間に現れる白い息は、どんどん白くなっていきました。

もしあの会話がなかったら、私たちは無言のままAを待つことになったでしょう。そこには、文字通り冷たい空気が流れ、寒さが余計体にしみたと思います。

笑顔と共に体は温まり、場の空気も明るくなったあの日。それから私にとって白い息は、寒さの象徴ではなく、楽しさの度合いを測るものになったのです。

体を縮こまらせる人たちをよそに、私たちは寒さに負けない明るい声で、遅れてきたアイコを迎えたのでした。

(文・駿河慧)

ライタープロフィール

水族館は好きだが、生臭いのだけは耐えられない。