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餅つき コンビネーション

夫婦はためらわず、全力で。餅つきの音がきこえる|徒然花

駿河 慧

駿河 慧

コラム・徒然花、今回のテーマは「餅つき」です。餅つきをする夫婦の見事な連係プレイを目にした私。それは、夫婦の絆を強く感じさせる経験でした。

餅つきで出会ったパワフルな神主夫婦

餅つき 夫婦
毎年1月4日になると、実家近くの神社で餅つきが行われます。初めてこの餅つきを知ったのは小学生の頃です。

餅つきを初めて直に見られるとあって、幼いながらにすごく興奮したのを覚えています。ついた餅は無料で配られるのもあり、食欲旺盛な私はテンションが上がる一方。毎日カレンダーを見ては、当日を楽しみに待っていました。

そして、待ちに待った餅つき当日。

始まるのは午後3時。丁度おやつ時の時間です。私は開始時間よりも1時間早く神社に着くように向かいました。到着すると他の住民はおらず、いたのは餅つきをする神主さんとその奥さんのみ。2人は臼や杵などの道具を準備しているところでした。

神主さんは私の姿に気付くと手招きをします。傍にかけ寄ると、「早いね」と声をかけられました。神主さんと面識がなかった私は緊張し、一言「楽しみで……」と言います。それを聞いた神主さんは笑顔になり、持っていた杵を差し出しました。

「持ってみる?」

初めて間近で見た杵は思っていた以上に大きくて戸惑いましたが、触って見たくてうずうずしていた私は迷わず受け取りました。

しかし、持っただけですぐにふらつき、真っ直ぐに立てません。それを見ると神主さんは笑い、すぐに杵を取り上げてくれました。こんな重い物を軽々と持つ神主さんを“すごい”と思い、驚きで固まりまった私。

「もう少し大きくなったら持てるよ」

神主さんの奥さんがそう言うと、神主さんと同様に杵を簡単に持って見せます。パワフルな夫婦に、私は呆気にとられました。

ためらわずに、全力で。

餅つき コンビネーション
3時近くになると徐々に人が増え始めました。私は最前列を陣取ります。

時間になると神主夫婦が登場し、餅つきが始まります。神主さんが餅をつき、奥さんは餅をひっくり返す係です。

神主さんが餅をつくと、奥さんが餅を一回転します。単調な作業ですが、夫婦はリズムよく繰り返しました。2人とも躊躇いは一切見せず、ひたすら餅をついていくため、その阿吽の呼吸に私はひたすら感動します。

夫婦の絶妙なコミュニケーションによって、あっという間にお餅ができあがります。神主さんは最後まで奥さんの手に杵を当てることはありませんでした。どうしてそんなに上手くできるのか不思議に思った私は、2人に尋ねます。すると、神主さんから素敵な言葉が返ってきました。

「俺がためらうと奥さんもためらう。だから全力でやるんだ。そうするといつの間にかお互い遠慮がなくなるんだよ」

信頼し合っているからこそ全力を出せる。そこまでの領域にいきつくのにどれだけ時間がかかったのか、子供の私には想像もつきません。しかし、おばあちゃんになった時に旦那さんとそんな関係を築けていたら……と淡い夢を抱きました。

この人なら「安心」と思える神主さんたちはまさに理想の夫婦です。

後から聞いた話ですが、神主夫婦は普段から仲が良く、近所の人から“おしどり夫婦”と呼ばれているそうです。そんな2人が見せる餅つきを周囲の人は毎年楽しみにしていると聞き、ますます羨ましい夫婦の形だと想いました。

私が大人になった今でも、神社では神主夫婦による餅つきが毎年行われています。
地元を離れて久しく神社に足を踏み入れていませんが、きっとあの夫婦なら変わらず、見事に息の合った餅つきをしている。そんな予感がします。

(文・駿河慧)

ライタープロフィール

水族館は好きだが、生臭いのだけは耐えられない。