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コラム 変人

夕焼け時に出会った、不審者以上に不審な少女の話

駿河 慧

小学生の頃は、太陽が沈む前の時間帯に帰宅することができました。早々と自宅に帰ると、とても1日が長く感じられたものです。

特に1日が長く感じられるのが「冬」。10月下旬あたりから、最早夕日の影もなくなり、18時でも暗闇へと変わっていきます。

やがて中学生になった私は、部活に入ったものの、冬の部活は17時頃には終わって帰宅していました。

まさか自分が会うなんて…

コラム 変人

日が落ちるのが早くなる秋から冬は、学校の先生たちは、口を酸っぱくして「不審者には注意しろ」と言っていました。

ひねくれていた私は、それを聞く度に「こっちがいくら気を付けていても、出るものは出る」と、注意喚起の言葉は右から左にすり抜けていました。友達とも「会ったら返り討ちにてやろう」と無謀極まりない話をしていたのを覚えています。

そんな私が、部活を終え友人と2人で、帰宅している時に遭遇したのが、“にやつきおじさん”です。

“にやつきおじさん”とは、私が勝手に名付けた名で、友達とその時のことを語るために付けた名前。彼は、見た目は普通の中年男性でした。しかし、ひたすらにやついているのです。

心の中で思わず「キモッ…」と思っていたのですが、おじさんは私たちに近寄ってきたのです。彼は「○○ってお店がどこにあるか知ってる?」と、普通の質問をしてきました。

「この人が不審者だったら、この質問は王道的すぎるな」とぼんやり思いながら、対応を友人に任せていたら、突然おじさんが友人の手を引っ張って、無理やり引き寄せようとしたのです。

その瞬間、私の鼓膜を突き破ったのは、友達の動物的な雄叫びでした。

女子が言いそうな「きゃぁぁぁー!!」ではなく、怨念を振りまく鬼女のような「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」という叫びです。不審者の行動よりも友達の叫び声に驚きましたし、正直言ってドン引きです。

女子の叫び声は雄叫び

コラム 夕焼け 不審者
何も友達の声にドン引きしたのは私だけではありません。にやつきおじさんもドン引きしていました。にやつき顔がひきつり顔になり、後ずさりしながら消えていったのです。これではどちらが不審者か分かりません。

友達の顔は恐怖で引きつっていて、とても冗談で叫んだようには見えません。聞けば、不審者と分かった瞬間に無我夢中で叫んだため、あのような奇声が出たとか。

火事場の馬鹿力とでも言うのでしょうか。その声で不審者を撃退した友達は大変たくましく見えました。

本当に恐怖を感じると声が出ないと聞きますが、どうやら友達の場合は逆で、恐怖を消し去るために反撃する動物的な人間だったのでしょう。

それから、何年後かに彼女と会う機会があり話を聞くと、どうやらその後も、不審者に頻繁に遭遇するという不運が続いたようで、そのたびに彼女は、あの雄叫びを発したらしいです。

夕方は「逢魔が時」といって、魔物が出る時間帯と言います。彼女にとってはまさに魔の時刻そのものなのでしょう。あの奇声が響き渡っているのかと思うと、魔物は彼女なのかもしれませんね。

不審者と遭ったら、相手以上の不審者になれば追っ払えると、冗談のような話を聞いたことがありますが、彼女においては、正しかったのでしょう。

“にやつき”おじさんが、“ドン引き”おじさんに変わるくらいの効果がある「雄叫び」。私はあれ以降、幸いにも不審者らしき人には遭っていません。いつか遭遇してしまった時のことを考えて、この方法はいつまでも覚えていたいです。

(文・駿河慧)

ライタープロフィール

水族館は好きだが、生臭いのだけは耐えられない。