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オタク コミケ

こんな青春を送りたい!オタサーは変人ばかり「げんしけん」第1回〜オタク編〜

ブルネイ

アフターファイブに読んで欲しい漫画たち。今回紹介するのは、オタサー(オタクサークル)というディープな世界に住む変人たちの、オタクライフと恋を描く「げんしけん」です。

本作では、アニメやゲームなど、いわゆる“二次元”にハマるオタクたちが世間から白い目で見られながらも、それを横目に見つついかにオタク生活を謳歌しているかが分かります。

本作を『オタク編』『恋愛編』『続編』と計3回にわけて、魅力を紹介したいと思います。今回は『オタク編』です。

ゆる~いサークルに集うオタクたち

オタク コミケ

「げんしけん」は大学、しかもオタサーを舞台にした漫画です。

部活のように大きな大会を目指し汗水流すサークルではなく、物語の舞台となる“現代視覚文化研究会”(以下、現視研)は、ひたすらアニメや漫画を見て、時たま感想を語り合うだけのゆる~いサークル。

そんな現視研の扉を叩いたのが、主人公の笹原完士です。

オタク仲間を求めて入会を果たし、サークルメンバーの前で見事オタクであることをさらし、同士を得ます。

本作の連載が開始されたのは2002年。当時は今と比較するとまだ、“アニメは子供が観るもの”という考えが色濃い時代でした。そのためオタクは日陰のもとで趣味を楽しんでいたのです。

その頃は笹原のように、同じ趣味をもつ「仲間」を探すために、オタサーに入部することが珍しくありませんでした。趣味をおおっぴらにできる世界に飛び込み、自分の好きなことを好き放題に楽しむ。笹原はまさに等身大のオタクの姿であり、そこが本作の魅力へと繋がっています。

その後も次々とコスプレイヤーなど個性豊かなオタクが登場し、同じように仲間欲しさで現視研の扉を叩きます。

オタクの中に飛び込んできたパンピー

オタサーには、時折生粋のオタク以外の人物も入会することがあります。本作に登場する春日部咲もオタクではないのに、オタサーに入会する人物。彼女は、オタサーという濃い世界に、片思い相手・高坂真琴を追うため、現視研へ入会します。

咲は、むさ苦しくて冴えない男ばかりの現視研に、高坂がいることを我慢できず、退会させるために顔を出すのです。しかし、オタク嫌いと自称しつつも、徐々に現視研メンバーの趣味に理解を示していきます。

ただ、咲は最後までオタクの趣味に足を突っ込むことなく、パンピー(※1)としての立場を貫きます。彼女を通して、オタクたちの生活の摩訶不思議さがいかに突っ込みどころ満載で、一般人には理解されがたいものなのかが伝わってきます。

――ひとつの絵でしかないのに、なぜキャラクターに興奮できるのか?
――ロリキャラクターが暴行されるのを見て罪悪感は抱かないのか?
――ゲームのためになぜ深夜からゲームショップに並べるのか?

咲の口からは疑問とツッコミが次々と飛んできます。

オタクにとっては普通なことが、パンピーからしたら普通じゃない。そんな当たり前のことが咲を通して伝えられます。

(※1)パンピー…一般ピープルの略。本作ではオタクではない人間のこと

オタクの祭典“コミック・フェスティバル”

オタク コミケ

現視研は、部室でアニメなどの感想を語り合うか、各々の趣味に没頭して1人の時間を楽しむのが日常です。そんな現視研が活発に動く時期があります。それが、“コミック・フェスティバル”(以下、コミフェス)が開催される夏と冬です。

実在する“コミックマーケット”(以下、コミケ)が元ネタのコミフェス。同イベントは、コミケと同じく夏と冬に開かれる同人誌即売会(※2)となっており、ここでお目当ての同人誌(※3)を買うことが、現視研メンバーの目的です。

同人誌は書店に売っている本と違い、アマチュアが販売しています。通販がない場合はその場でしか買えない貴重な本となります。この場を逃したら買えないため、全国からオタクたちがコミフェスに集います。

それまでオタク友達がいなかった笹原は、現視研に入ってから、初めてコミフェスに参加します。しかも、初参加となるのが夏に行われる、通称・夏コミ。夏の暑さに加え、汗の匂いや並んだときに接触する肌の感触が最高に気持ち悪い時期です。
しかしオタクはそんな状況には負けず、始発から電車に乗って向かい、会場前で並ぶ長蛇の列に圧倒されるものの、気持ちは高揚感でいっぱいになります。

念願だったコミフェス参加で笹原は、内容や値段には目もくれず、好きなキャラクターの本や、ちゃっかり18禁本もバンバン買っていきます。本作を読めば、笹原の姿にデジャヴを感じる、オタクの人もいるかもしれません。「あるあるネタ」に共感するのも本作の楽しみのひとつです。

(※1)同人誌即売会…自主制作した本やグッズを販売するイベント。出店者として、プロだけでなくアマチュアも参加が可能。
(※2)同人誌…出版社などを経由せずに、アマチュアが自主制作した本。

 知られたくないけど、知ってほしいジレンマ

笹原や高坂が入会した後も、現視研には続々と入会者が登場します。

2人の後に入ってくるのが、現視研では初の公式女性メンバーとなる大野加奈子。

黒髪ロング、地味顔であるものの、“サッカーボール”と称されるダイナマイトボディを活かし、コスプレイヤーとして活躍します。彼女も笹原と同様に、周囲に趣味を隠し続けたオタクです。

そんな彼女の自宅にある日、衣装を作ってくれる田中総市郎と、咲がやってきます。

部屋を片付けるからと大野は、田中と咲を扉の前で待たすものの、咲は鍵の空いたままの扉を開けて勝手に部屋へ上がりこんでしまうのです。

そこに貼ってあったポスターを見てしまう咲。そこに描かれたキャラクターは、少し変わった趣味でした。過去に男性の趣味を笑われたトラウマから、周囲に趣味を隠してきた大野は、ポスターを見られ慌てふためきます。そして、涙目で、趣味が変であるかを、咲に問いかけるのです。

咲は、問題なのは趣味よりも、それを理由に人を遠ざけることだと語ります。

「本当は仲間が欲しいんだよね だから鍵かけなかったんでしょ?
まったく あんたらは寂しがり屋だね 気にすんなよ」

(「げんしけん」 第1巻 第6話p162.より)

“理解されない趣味だからこそ、仲間がほしい”
“知られたくないけど、知ってほしい”

オタクたちの寂しさや相反する微妙な気持ちが、登場人物たちを通して伝わってきます。

変人で不器用なオタクたち。不慣れなコミュニケーションで他者と繋がりを持とうとする彼らの姿は、もしかしたらオタクじゃない人でも身に覚えがあり、共感できるかもしれません。

そんな彼らですが、オタクとはいえ、あくまでも生身の人間。同じサークルの男女であれば、意識してしまうのも必然です。次回は『恋愛編』と題して、“オタクの恋愛”という視点で「げんしけん」を紹介します。

オタク コミケ
「げんしけん」

(文・ブルネイ)

 

ライタープロフィール

AFTR5編集部
女の子座りができないブルネイです。
地べたに座るのが苦手、掘りごたつ派。